平成の桃太郎

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» 水素を熱分解して生産する

僕が社用車で載っている車は、燃料電池自動車といって、水素を充填して走る車です。水素が待機中の酸素と結合することで電気エネルギーが発生し、その電気でモーターを動かして走る、つまり、排気ガスの代わりに純水を排出して走る車です。

じゃあ、その水素ってどうやって作るのかといういうと、一般的によくイメージされるのは、水の電気分解です。理科の実験とかでやりませんでしたか?実際には、電気分解で水素を作ろうとすると、火力発電などの1次エネルギーから、2次エネルギーである電気を作って、その電気で水素を作るわけだから、エネルギーロスが大きすぎて(変換効率は27〜45%くらいらしい)効率が悪いのと、製造に時間がかかりすぎて製造施設のプラントが巨大になりすぎるので、実用上は難しいです。

実際の製造としては、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を水蒸気改質法などの、つまり化石燃料に触媒と熱を加えることで水素に変換する工業的な手法が主流となっています。図2さんしょう

しかし、もともとエネルギーである化石燃料から水素を作っても、製造コストとしては安価だけど、やっぱり水から水素を作った方がロマンがあります。でも、水を電気分解したのではエネルギーの変換効率が悪すぎる。そこで、熱化学分解水素製造プロセスについてブログにします。図1にあるように、水は水素と酸素からできているのだから、水素分子と酸素分子の結合を解いて、水を分解してやれば水素はできるわけです。じゃあ一体、何度で水を沸騰?させれば、分解されるかというと、約2000度です。100度で気化する水を2000度まで加熱するのは困難だし、2000度加熱する燃料も無駄なので、ふつうに水を熱分解するのでは意味がありません。

そこで、触媒を使って、水を比較的低温で水素を科学的に分解しようというのが、今回の内容です。図3のように、カルシウムと臭素と酸化鉄を触媒にしたやり方を紹介します。ネットで探したら出てきました。日本化学会誌1980年発行なので、僕が生まれる前の記事です。
式は若干難しいですが、要は、触媒を経由することで、水を水素に分解できるということです。大体400度から600度くらいの熱で反応が進むので、地熱や(政治的な発言になりますが原発の排熱)などで活用が期待された技術です。今のところ、大規模に実用化されたとは聞いたことがないので、第17族元素ハロゲンを多用することでプラントの寿命だったり、反応速度の問題だったり、さまざまな課題がありそうです。

今回は、水素の熱分解について紹介しました。地熱でも場合によっては400度以上に達するので、地球の地熱エネルギーを使って水素をクリーンに熱分解で製造できたら夢のある技術ですよね。